『楽しみながら』『継続』すること ― lily & co. お客さまの物語 Vol.4

「当たり前」がどれほど尊く、美しいものなのか。

今回ご紹介するのは、これまた長いお付き合いのお客さま。

長年書道と向き合いながら、能登の震災を経験され、日常のありがたさや自然の美しさに改めて心を動かされたそうです。

静かに、でもしっかりと響いてくるその言葉の数々は、今を生きる私たちの胸にもやさしく沁みわたります。

  1. 書道との出会い・意味について

書道を始めたきっかけは何ですか?

きっかけは、母が書道を少しだけやっていた影響で、小学校低学年の時に、はじめて筆を持ちました。母に後ろから筆を持ってもらいながら一緒に書いた記憶があります。
小学校6年生のときから高校生まで習字教室に通っていました。
高校時代は書道部で古典の臨書に励んでいました。
※臨書:臨書(りんしょ)とは、書道において、過去の著名な書家の作品(古典)を手本として、その書風や筆遣いを模写する学習方法

続けてこられた理由や、書道がご自身の人生にもたらしているものは?


大学時代よりしばらくの間、書道から離れていましたが、二十代後半から書道を再開しました。
再開したきっかけは、いつか世に残る作品を書いてみたいと思うようになったからです。生活の中や町のなかの至るところに目にする筆文字(お酒のラベルや看板文字等)を見て、素敵だなと感じるようになり、自分もいつか書いてみたいなと思ったことが再開のきっかけです。
再開した際、師事した先生の作品に感銘を受け、筆文字だけでなく書道の歴史や文字の成り立ち等書の奥深さに触れ、益々その奥深さに常に興味をもち続けているという状況です。作品展にも出品させていただいたり等、色々な経験が出来たこともありがたく思っています。
書道があったからこそ出逢えた先生や方々とのつながりがあり、今の生活スタイルがあり、今の自分があると思っていますのでなくてはならない存在です。

書に向き合う時間は、ご自身にとってどんな時間ですか?


最近は仕事の忙しさで出品活動は少し休んでいますが、書道に向き合う時間は心を無(む)に出来る貴重な時間です。

特に心に残っている作品や言葉があれば、教えてください。


「鉄樹花開五月」という禅語がありますが、この言葉が好きで書いた作品があります。
鉄樹とは花が咲かないといわれている木のことで、そんな鉄樹に花が咲いたという言葉です。どんな困難な状況でも努力を続ければ花が咲くというという意味です。
この言葉を、lily & co.さんのリングの内側に刻印していただくために、ミカさんにこれに近い英語の言葉を調べていただき刻印していただきました。
リングも言葉も気に入って毎日つけてます♪

2. 能登半島地震について


能登半島地震ではご実家に被害があったと伺いました。
実際に現地を訪れたり、ご家族と過ごされた中で、特に印象に残っている出来事や言葉はありますか?


特に印象に残ってる出来事は、小さいころから家族が過ごしてきた実家を解体したことです。
地震で壊れてしまうことより解体作業として壊してしまうことはとてもつらいことでした。

震災後、ご自身の中で、価値観や優先順位が変わったと感じることはありますか?


悲しいことですが、壊れるのは目に見えるものだけではなく目に見えないものも壊れることがあり、そういうことを経験することで価値観や優先順位が、色々変わったと感じています。
目に見えないものの大切さをより感じるようになりました。

「普段の暮らし」や「当たり前の日常」がどれだけ尊いものか、改めて気づいたことはありますか?


日頃の暮らしの中のすべてのこと、蛇口から水が出てトイレが出来て自分の家でご飯を食べて寝て等々、そんな全てのことが尊いことだと実感しました。
そんなささいなことは、日常が戻ってくるとついつい被災者である私たちでも忘れがちのことです。そのささいなことが尊いものだと気が付きました。
何もないこと、普通に生活していることが尊いことだと実感しています。

今、地震を経験して改めて同じように困難を経験された方や、日常に悩みを抱える方へ伝えたいことはありますか?

今日を大切にしたい
目の前のことを大切したい
感謝の気持ち忘れないようにしたい
と自分に言い聞かせています。
いつ何が起きるかわかりません。
1日1日を大切に感謝の気持ちを大切にしたいと思いました。

2. ライフスタイルと美意識について

最近、心が動いた出来事や風景を教えてください。


震災の復興の手伝いをするため、月に一度能登に帰省しています。
月に一度ですが、季節の変化を感じることができる能登の自然の風景(空、山、川、田んぼ、海)を五感で感じることで、心が落ち着きとても癒されています。
きれいな景色を見てきれいな空気をすっておいしいご飯を食べることがとても贅沢な時間です。
自然は怖いけど、自然は素晴らしいとあらためて感じています。

1日の中で、自分らしさを感じられる時間やルーティンはありますか?

朝起きて会社に行くまでの時間の中に、ほんの10分くらいですが、お茶を入れてぼーっとする時間を作っています。
何も考えない無になる時間が、今のルーティンになっています。

静かな時間に考えること、大切にしていることはありますか?


静かな時間には出来るだけ何も考えないようにしています。
のんびりゆったり過ごすようにしています。そんな時間がとても貴重でリフレッシュ出来る時間になっています。


ものを選ぶときに意識していることや、自分なりの基準はありますか?


何を選ぶかで少し変わりますが選ぶものが生活の中にどう生かされるかを想像しながら選びます。リング等の石やアクセサリーは頭ではなく心が動かされるかどうかといったインスピレーションも大事にしています。

ずっと続けている習慣や、意識的に手放したことはありますか?


昔から意識して身体によいものを取ることを心がけています。
なるべく添加物が少ないものをとか、昆布からだしをとったり等の手間をかけた料理を心掛けています。美容と腸内環境を整えるためにヤクルトは、毎日飲んでいます笑

4. これからのこと


今後、挑戦してみたいことや続けていきたいことはありますか?

今後、挑戦してみたいのは書道の個展です。書道は、何らかの形で続けていきたいです。

ご自身の書に、これからどんな言葉を綴っていきたいですか?

生活の中に取り入れてずっとみていられる書が理想です。
前向きになれるような言葉を綴っていけたらいいなと思います。

創作や表現を通して、自分と向き合い続けている方に、どんな言葉を届けたいですか?

創作や物をつくりだすことは、大変なこともありますが
『楽しみながら』『継続』することが大事かなと思っています。
私自身、好きな文字を書いている時は楽しみながら書いていますが、展覧会などに出品するための書を書くときはどうしても結果を求めてしまうことがあります。
展覧会もモチベーションの一つにはなっているのでそれも大事なことですが、継続するには楽しむことが大事で、結果を求めるより『挑戦』することと『挑戦』し続けることが大切だと思っています。
そんな考えに共感して頂けたら嬉しいです。