「変わっても、変わらなくてもいい」 ー lily & co. お客さまの物語 Vol.1
今年、lily&co.は10周年を迎えることができました。みなさまのおかげです。本当に心から感謝しています。
サンフランシスコの自宅、キッチン横の小さなデスクからスタートしたリリコ。日々目にする美しい景色や、世界中を旅して見て感じたこと、そしてブランドを通して出会えたお客様お一人おひとりから、たくさんのインスピレーションをもらいながら、ここまで歩んでくることができました。
中でも、お客様お一人お一人とのコミュニケーションは、私にとって大きな勇気の源であり、喜びを分かち合える大切な機会です。それはまさに、リリコというブランドの核を形作っているものだと感じています。
10周年という節目を迎えた今、あらためてその想いを強くしています。今年は、これまで以上に「リリコのお客様」にフォーカスした一年にしたいと思っています。その一環として、お客様のプロファイルをみなさんとシェアしていく予定です。
普段はなかなか出会うことのない、リリコのお客様同士のつながりや、そこから生まれるインスピレーションを楽しんでいただけたら嬉しいです。
第一回目にご紹介するお客様は、もう10年ほどのお付き合いになる方。私にとっては、まるでお姉様のような存在です。ご自身のスタイルをしっかりと持っていて、美しいものをこよなく愛し、いつもさまざまなことを教えてくださいます。
1. ルーツについて
幼い頃から好きだったものや、影響を受けた出来事はありますか?
3歳の頃、お雛様の雛壇の前で着物を着た写真を見ると、両手にたくさんのリングを付けていて、自分でも驚きます。
実家には宝石屋さんが出入りしていて、幼い頃から母の横に座って目を輝かせていたようです。
アートや音楽に興味を持ったきっかけは?
2人の兄の影響です。3人でよくクラシック音楽のイントロクイズをして遊んでいました。地方に住んでいたので、有名な絵画が東京に来ると、小学生の頃から見に行っていました。家には世界の名画集があり、よく眺めていた記憶があります。
自分では絵を描くのはあまり得意ではなく、「できないからこそ好き」という感覚に近いです。でも、ポスター制作は得意で、全国大会で賞をいただいたこともあります。
ご自身の美意識はどのように育まれましたか?
高校生の頃に家で見ていた『世界の一流品図鑑』を眺めていたことが大きいと思います。
また、バイオリンやピアノの先生が家に出入りしていた環境も影響しています。大学以降は海外にも出かけ、本物を自分の目で見るよう心がけてきました。
2. ライフスタイルと価値観
どのような日常を過ごされていますか?
特別なことはありません。毎朝体操をして、時間のある時に英語とドイツ語の勉強をしています。
Eテレで高校生向けの番組を観たりもします。「あんなに勉強したのに、こんなに忘れてる!」と驚く日々ですが、学ぶことが昔から好きなんですね。
自分のスタイルを持つことの大切さとは?
「これが自分のスタイル!」と意識して決めているわけではありません。生きてきた結果、こういうスタイルになったのだと思います。
ただ、他人と比べないようにしていて、相手の方が喜ぶことをしたい、という気持ちはいつも持っています。
大切にしている習慣やルーティンはありますか?
毎週、次の週の予定を考えるのが習慣です。誰と会う、どこへ行く、そのシチュエーションに合わせてジュエリーや洋服、バッグを考えます。プレゼントの準備も含めて、そうした予定を楽しみにすることで、日々の暮らしが豊かになります。
毎年のウィーン旅行も、1年かけて楽しみながら準備しています。
3. インスピレーションについて
どのような場所や時間にインスピレーションを感じますか?
ウォーキング中に近所の公園やお寺のお堀、川沿いを歩いている時です。
特にウィーン郊外の「ベートーヴェンガング」という散歩道は一番のお気に入り。
また、美術館で観る絵画からも多くのインスピレーションを得ています。
好きなアートやオペラの作品、特に印象的だったものは?
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絵画:ゴーギャンの「オレンジ」、フランス・レンヌ美術館の所蔵品
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仏像:京都・広隆寺の弥勒菩薩。何時間でも見ていられるほど美しいです。
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オペラ:どれも大好きで選べませんが、特に舞台装置や衣装が素晴らしいものが好きです。
最近は資金不足で現代的な演出が増えていますが、豪華絢爛な演出のオペラはDVDで楽しんでいます。
歌声やオーケストラの生演奏はやはり圧巻です。
特に好きなオペラ作品
ヨハン・シュトラウス《こうもり》
ロッシーニ《チェネレントラ》
プッチーニ《ラ・ボエーム》
ヴェルディ《椿姫》
……挙げ出したら止まりません!
美しいものと向き合うことで、ご自身の人生にどんな影響がありましたか?
日々、心が豊かになります。
4. 人生の中で受け継がれてきたもの、選び続けるもの
ずっと大切にしているもの、長く愛用しているものはありますか?
・マーククロスのバッグ(47年前のもの)
・ウィーンのプチポワンのピルケース(45年前のもの)
・ヴァシュロン・コンスタンタンの手巻き腕時計(かなり古いもの)
・南仏・セナンク修道院で購入したマリア像
・オペラ歌手の友人からもらった、ニューヨーク・メトロポリタン美術館のカレンダー
・翡翠のバングル
・モンブランのヨハン・シュトラウス記念万年筆(クリップがバイオリンの弓のデザイン)
・ブライス人形
・退職記念にオーダーしたリリコのグレーダイヤのリング
・これまで集めたリリコのダイヤを繋いで作ったブレスレット

変わらず大切にしていることと、時とともに変化していったことは?
「faith(信念)」という言葉です。何事もこれがあってこそ、と思っています。
また、「人と比べないこと」。若い頃はつい他人と比べて落ち込むこともありましたが、それは自分にとって何にもならないと気づき、心が楽になりました。
5. 未来への思い
今後やってみたいこと、挑戦してみたいことはありますか?
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世界のオペラハウス巡り
(ミラノ・スカラ座、英国ロイヤルオペラハウス、パリ・オペラ座、ニューヨーク・メトロポリタン歌劇場)
ウィーンはすでにすべて行きました。 -
ドイツ語だけでウィーンとリンツに滞在すること。これはかなりハードルが高いです。
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今は自分自身よりも、世の中の中心で頑張っている人たちを応援したいという気持ちが強いです。
Mikaさんやウィーンのオペラ歌手、ピアニスト、研究者たち。なぜか皆、同じような年齢層ですが、そういう方々を応援していきたいと思っています。
ご自身のスタイルを大切にしたいと考えている方へ、メッセージをお願いします。
人と比べず、自分を信じて前に進んでください。
スタイルは変わってもいいと思います。そこに縛られることなく、その時々の自分が頑張りすぎず、自然体でいられる「心地よい場所」を探していくこと。
変わっても変わらなくても、きっと誰かが「素敵だな」と思ってくれるはずです。
そして何より、自分自身が「私って素敵だな」と思えることを大切にしてほしいです。